皆さんは『サイハテ』という曲を覚えておいででしょうか。小林オニキスさんという方が作詞・作曲を手がけ、初音ミクがボーカルを務める、いわゆるVOCALOID曲です。TRASH-NEWSでも過去に幾度となくとりあげてきたとおり、この『サイハテ』はともすればイロモノと見られがちな"初音ミクのVOCALOID曲"という枠を超えて素晴らしい名曲。物憂げながらも底明るい曲調に、前向きながらも終末的な歌詞、この相反する2つの要素と初音ミクの無機質な歌声が、言葉では言い表せない何かを心に残してくれます。小林オニキスさんが曲と共に作成したPV『【初音ミク】 サイハテ 【アニメ風PV・オリジナル曲】』がニコニコ動画にアップされて以来、再生数は67万を超え、なんと再生数の総合ランキングでも143位。そしてサイハテタグをつける二次創作動画も380件を数えます。『サイハテ』は多くの人に愛される名曲となり、作詞・作曲・編曲・作画・動画……『サイハテ』にまつわるすべてを初音ミクと築き上げた小林オニキスさんもまた多くの人に愛される職人となったのでした。
そんな初音ミクと小林オニキスさんが新曲を公開されました。その名も『ORCA』。
水泡がはじけるような明るい音と、水底に沈み込むような低い音がとても叙情的です。初音ミクも無表情のようでいてその実、切なさを堪えているような歌声を聴かせてくれます。ニコニコ動画内の作者コメントとブログ『アダマウローBLOG』の記事によると、この『ORCA』は思春期の夏
をテーマにした曲とのこと。幼い頃の夏に誰もが感じたであろう、周囲との時間感覚のズレによる無常観が意識せずとも伝わってきます。
『ORCA』は今回もPVとしてニコニコ動画で公開されました。動画も『サイハテ』PV同様に小林オニキスさんの手がけたもの。ロールシャッハ風PV
というタイトルどおり、夏を感じさせるイメージが現れては流れていくという、さまざまな解釈を呼べる構成になっています。たゆたう水面にきらめく陽射し、打ち上げられる花火にゆらめくチョウ、螺旋を描いてきらめく水流に燦然と輝くスク水……オニキスさんが意図されているように、僕にもさまざまな妄想……形象が脳裏をよぎります。『サイハテ』のPVにもシマウマや竹林、花畑、川などさまざまなオブジェクトが盛り込まれ、多くの解釈を呼びました。『ORCA』にもこれからさまざまな解釈や定義がつけられ、多くの二次創作を生み出していくことでしょう。
僕は『ORCA』を聴き、1回目で"一茂とはいかないまでも、海老蔵くらいかな"と感じ、2回目でサビのフレーズが脳裏から離れなくなり、3回目でイントロからの4分37秒が脳内で再生されるようになり、4回目でスク水の存在に気づき、今となってはもう何回再生したかわからないほど日常と夢の中をエンドレスに流れています。『ORCA』は前作『サイハテ』にも増して中毒性のあるスルメ曲ではないでしょうか。ソースは僕。そして3万の人々。これは残暑、夏の過日を憂う頃にきっとより多くの人の心をつかむ曲です。『ORCA』は『サイハテ』とは切り離された確固たる独自の世界観を得、そして同時に"小林オニキスの世界"を確立したと、僕は考えています。
『サイハテ』がポップ・レクイエムと評されたように、この『ORCA』にも何か良いジャンル提案が出来ればよいのですが……良い言葉が見つからないので『紺色エレクトロニカ』とでも……ほら、主にスク水から着想。
なお、mp3ファイルの詰め合わせ(カラオケファイルと歌詞のテキストファイル付き)が現在PIAPROとアップローダーにて公開されています。アップローダーのURLとパスワードはニコニコ動画のコメント欄に記載されているので、PIAPRO非登録者の方はそちらよりお早めに。
小林オニキスさんは『サイハテ』を公開されて以来、DTMマガジン8月号にインタビュー記事が掲載されたり、全国のイベントに参加したり、コミケに作曲サークルの一員として出展したりと、活躍の場を広げていらっしゃいます。僕もいちファンとして、どこまでもご活躍を追っていければと思います。この記事の最後にひとこと。『ORCA』は……決してふくし君では、ない……っ!! 素晴らしい曲です。是非皆さんも夏の終わりのこのときに。
2009年01月06日 0時更新
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